茶道規範54 要録 茶杓

茶杓の歴史。

鄭恩*1ガ茶譜ヲ按ズルニ撩雲ハ茶具十六箇ノ内竹ノ茶匙也ト云リ
撩ハ取物ヲカカゲル(木+龍)ト注ス
竹ノ茶杓唐明ニ初ル
倭朝ニハ往昔象牙ヲ以上テ作ル

中国の茶書、茶譜には「撩雲」という竹の茶匙があったという。
竹の茶杓は中国が起源である。
日本は昔は象牙で作っていた。

…この話だと、象牙茶杓はシノワの影響でないことになり、日本独自の工夫、という事になってしまう。

よく考えると、象牙茶杓の存在は茶の湯が禅寺由来でない事を示している様な気がするのだが、当時の仏教の象牙に関する感覚がどうだったかわからないので、殺生戒にひっかか
るかどうかは微妙か?

其コロ象牙稀有ナリ故ニ侘人ハ水牛ノ角ニテ作ル汚穢ヲ厭ツテ漆ニテ塗テ用ユ
然ルヲ祖師珠光輕ク侘テ竹ノ目ノ添樋有テ節ナキヲ以テ作ル
紹鴎モ亦従之
其ノ後利休ニ至テ竹ニテ作ランニハ節アラデハトテ添樋ナキ節竹ヲ以テ造クル
自此己往昔従之樋ハ茶ヲ匙フニ便リス故ニ能ク茶ヲ杓者ヲメ樋無ノ竹ニテ削リ與ヘタリト也
(略)

珠光が竹茶杓の始祖で、その頃は真の茶杓だった。
紹鴎も同じ。
利休が樋無しの草の茶杓を作り始めた。
樋は茶をすくうのに便利だからだっただけなので、茶がちゃんとすくえる人には樋無しの竹で作ってあたえたと言う。

珠光の竹茶杓「茶瓢」を極めたのは宗旦。
宗旦の弟子である宗偏が竹茶杓の始祖を珠光にしたのは当然か。

茶杓ビジネスはすでにはじまっていたんだなぁと思える記述である。

*1:火+恩