茶道規範75 要録 喫茶の法3

一 薄茶可喫心得之事

というわけで薄茶の心得。というか、所望の仕方。

濃茶ノ跡ヲ先ヅ仕廻給ヘト云フ事不可有之
主ヨリ先ヅ仕廻ベキトノ斷アリ
古織公朝ヨリ晝夜咄ト茶ノ湯ノ約束有テ無隙故濃茶ノ跡火ヲモ不直薄茶ヲ點タリ是ヲ例スベカラズ
然レ共主ノ隙入客方ヨリ難計故ニ濃茶ノ跡ヲ仕舞給ヘトハ不言メ直ニ薄茶ヲト望ミ其上ニテ炭望テ見度事也
不圖主ノ隙入出來ル理リ等アラバ何時ニ不依里見合テ可立
客方ノ隙入モ無據則能
以テ其儘薄茶ト不言メ主ヨリ先ヅ仕廻フベキトノ言ヲ待テ返答シテ可也

濃茶が終わった後、客が「どうぞおしまい下さい」とは言ってはいけない
亭主が「おしまいにしていいですか?」と尋ねるべき。
織部は一日中茶をやっていて忙しかったので、濃茶の後そのまま薄茶にしていたが、真似をしてはいけない。
しかし、亭主の予定は客には判らないわけで、濃茶をしまってから薄茶にしてくれ、
とは言わずに、すぐ薄茶をとお願いし、その上で炭手前もみたいですって言う事。
でもまー亭主の予定が判るようならどうお願いしてもいいわけですが。
客の今後の予定も亭主には判らない。
だから「そのまま薄茶を」なんて言わずに亭主が「おしまいにしていいですか?」を待とうよ。


要は、亭主が忙しいかもしんないから、薄茶じゃなくて続き薄茶をお願いしようネ。
でも、コミュニケーション的には亭主の方から訪ねて来るのを待とうネってお話。

この時代既に、続き薄茶が茶の湯のスタンダードになっている事が判る。

總メ薄茶ハ手前見物第一ナレバ今一服今一服ト可望見
手前草臥タルベキナト不可謂也
一紙目録ニ云ク眞ノ手前ト云ハ薄茶也草ノ手前トハ濃茶ヲ云也其本意茶ノ風味ヲ思フニアリ

薄茶は(冷めても各服なんだし)手前をゆっくり見れるので、もう一服を所望してでもいっぱい見よう。
「ちかれたー」なんて亭主は言っちゃダメ。
一紙目録にある通り、薄茶が真のお茶なんだから。これってお点前の善し悪し見れるって事だよね?


一紙目録ってのは多分「珠光一紙目録」つまり「山上宗二記」の事だろう。
真の茶の意味がじっくりお点前見る時間があることにある、という点が明解である。