釉から見たやきもの7 胎と釉

カラー写真2はいわゆる鉄赤釉を一方は美濃の五斗蒔土にかけ、他方は伊豆下田の土にかけたものです。
鉄赤釉は鉄釉の中では安定した釉で、むずかしい焼成法をしなくてもすむイージーなものです。
それに特別な土にかけなければ赤く出ないということもなく、この面からも安心して使える釉です。
ところが写真のように下田の土にかけると赤にはならずに青色呈色をしています。
この下田の土は常温下でも焼成後でも相当白いものですが、ろくろを挽くと手にしわがよります。
もともと火山起源の暗色岩石に地球科学作用としてのガスや酸性溶液が働き白い土にまで変質させられたもので、いまだにその作用の名残が残っています。
だから鉄赤釉をかけてもガス作用によって一種の強制還元状態になり、赤にならずに青になったと考えられます。

釉に色の名前がついていても、胎土によってはその色がでない、ということね。

これは一つの極端な例ですが、釉は独り歩きするものではなく、かならず土の上で行動します。
(略)
基本的にはまず土があって、それに適する釉を作るのが常道です。
この基本に忠実なやきものは、見て、触って、使って“これはやきものだ”と安心感を与えてくれます。
(略)
最近の釉への考え方は、ただ外見がよければいいんだ、そのために釉をチョット変わったカッコいいものにするんだとばかりに、釉素材の混合に心を奪われ、基本である土への融和を忘れる傾向があります。
でも、なぜそんな傾向になるのか考えますと、土が電話一本で入手できるようになって、土と陶工との関係が希薄になり、その結果、土と釉との相互関係の理解が弱まったからだと考えられます。

著者自身がそーゆー「入手し易くなった胎や釉」で実験しまくっているわけだけど、著者としては他人には土着性の高さを要求してるわけね?

でもまぁ地方の陶芸市に行っても、流通の改善で地域性がなくなって、「あれ?こーゆーのも○○焼?」と思うこと結構あるしね。