釉から見たやきもの8 カオリン系粘土

現代の釉は堆積性のカオリン系粘土を対象として考えられていること

今回の話は重いテーマを持っています。

前述の下田の白土はカオリン系の土ではありますが、湖や池沼に堆積した土ではなしに熱水変質によって生成された白土であり、(略)
これを裏返していうと、鉄赤を赤く呈色させる土は堆積性のカオリン系粘土であり、釉の調合はそんな土を対象として考えてあるので、下田白土は鉄赤釉の適用外だということになります。

現代の釉は、堆積性のカオリン系粘土を規準に作られている、と著者は言います。

さらに二、三例をあげてみましょう。
長石 五 ― 石灰 二 ― 粘土 1を混合した釉を作ります。
この釉は一般に使われている陶土あるいはそれに類した土にたいして非常に幅の広い適用範囲を持っており、比較的安心して使えるものです。
釉生理学的に換言すると、どの土にもよく付着し、胎とも融和して表面に光沢のあるガラス膜層を作ります。

まず無難な釉のお話からはじまります。

玄武岩、はんれい岩、蛇紋岩などは硅長質の岩石とは反対に硅酸が少なくてマグネシアや鉄の多い岩石ですが、これらの岩石を母体として風化分解した土は、長石―石灰―粘土釉ではガラス膜層を作らないケースが多いようです。

これだけでなく、いくつかの例をあげ、この釉が通用しないパターンを紹介した後で…

ここに一つの問題があります。
それは陶土資源との関連です。
いつまでも堆積性カオリン系粘土の供給が続くとは考えられません。
しかしそれで、やきものの歴史をザ・エンドにすることは絶対にしたくありません。
その対策として今からでも堆積性カオリン系粘土一本槍から他の粘土系のものに材料転換して行く必要があり、そうすれば在来の粘土の寿命も伸びるでしょう。

現代の主力粘土?の枯渇危機まで視野に置いているとは…。

著者の壮大な危機感が正当なものなのか…門外漢には判断がつきませぬ…