釉から見たやきもの9 釉の胎に対する物理性

釉は胎を保護強化する――とはいろんな本の釉定義にあらわれる言葉です。

マニュキュアが爪を強くする、みたいな奴ですよね。

■施釉すると分解する土…焼きしめは良いのだが

私が採取した土のなかで、次の四種の土は施釉が原因で焼成後破片分解し、その破片は自動車のフロントガラスのようになり、いくらでも細かく手で割ることができます。
施釉しないで焼くとそれぞれが立派な焼きしめ陶になります。

釉薬を掛けると劣化する理由は不明だとのこと。

■保護強化の顕著な例

写真14は大分県別府市坊主地獄付近の土を無釉で焼きしめしたものです。
ごらんのようにヒビ割れ線が出ます。しかし分解はしません。
写真15は同じ土で小皿を作り、一度焼きしめてヒビ割れにしてから、表の半分だけ長石―石灰―粘土釉をかけて焼きました。
すると施釉した所にはいままであったヒビ割れ線が消えました。
写真16はその裏側を示します。こちらは施釉してありません。
それに一度焼いた後にはヒビ割れ線だらけだったのですが、施釉した半分の裏側にはヒビ割れ線がほとんど見れなくなりました。
表に施釉しただけでも、裏側にまでこれだけの強化力をみせてくれて、その釉の力の強さに驚かされます。

釉が胎の上に膜を張るだけならともかく、胎を浸透し裏まで出てしまうのであれば、釉が胎を劣化させることだってありそうではあるなぁ…。