釉から見たやきもの15 流れる

写真60はいくつかの灰の温度と粘度との関係を調べるテストです。
(略)
私はこれによって各地の灰を比較しようなどとは思いませんが、同じ雑木灰でも産地によって差があることぐらいは判ります。
試料は右から、
・籾殻灰 佐賀県北波多村岸嶽皿屋窯付近
・竹灰 鹿児島県東入来町苗代川窯付近
・雑木灰 福岡県高取永満寺宅間窯付近
・〃 佐賀県北波多村の籾殻灰と同じ所で採取
・〃 栃木県益子町新福寺付近
(略)
ごらんのように流れます。
一三〇〇度での雑木灰の流れ方を見ますと、この雑木灰が生えている場所の土と深い関係があるような気がします。

ちなみに一番流れ易かったのは高取の雑木灰。むべなるかな。

「懐疑において限度を知ることが最大の知恵である」とはモンテーニュの名言ですが、何事によらず限度を知ることは最大の知恵のひとつでしょう。
流れさせてある程度で止める。
これは茶器、茶入などによく見られる知恵です。

なたれが無ければ茶入はつまらないですが、なたれが底にまで届いてしまうと、それはそれで失敗になりますから、
「流れるけど、止まる」様に掛けないと行けないわけですな。

ではそのためにどうするか?
それは流れすぎない釉を作って流れすぎない火度の所で焼く――としかいえません。
しかも、そうするための方法は無数にあります。
自分の窯で自分の焚き方で……と無責任なことしかいえません。

でもその困難さの認識が無かったな。
そうか、流れるけど、止まる、というのは結構大変なことなのか…。

■流れさせないために

これは古人がやりましたように、土や石を混ぜる方法がもっとも一般的でしょう。
その土や石は単味で焼いて流れないものがいいわけです。
(略)
しかし、流れを殺すと味も死ぬようです。

今後はなたれの賞翫の時も、その有り難さを噛みしめようと思います。