釉から見たやきもの16 コバルト談義

青に呈色するものとして一般にコバルトが考えられています。
コバルトとはもともと「地底の悪魔」という語原を持っていますが、これを精製する時、共存する砒素ができるので悪魔にされたようです。
しかし、やきものにとっても悪魔のような、いや魔王のような偉大な力を持っています。
その力とは
・青の魔力をもっていること
・呈色力が抜群に強いこと
・酸化、還元などの焼成条件に支配されない力をもっていること
などです。

呉須の話。

強力な青の発色を行える上に、少々胎の焼き方を変えても色が出る、ということなんですな。

■青の魔力(人間の目と青)

人間は他の動物に比べて視覚の動物です。
(略)
でも人間の目も万能ではありません。
大きなウィークポイントがふたつあります。
一つは紫外線不可視です。
(略)
もう一つのウィークポイントは“青系に弱い”ということです。
逆にいうと
茶褐〜黄褐系にきわめて敏感であり、この系の色では、自分が受け入れられる色とそうでない色との区別が敏感に近くされ、受け入れられない色は「汚れ」として認識されるわけです。ところが青系にたいしてはかなり鈍感であり、すぐわれわれはごまかされるのです。
洗剤のコマーシャルに“洗えばまっ白”などと出てきますが、実はわずかな青を加えて汚れをゴマカしているわけです。
(略)
青は魔王です。コバルトはそれを出しうる力を持っています。

ああ、そうなんか。
鈍感だからこそ、均一に綺麗に見えるわけか。

そういう意味で言うと、枇杷色の茶碗に茶渋の茶色と貫入の暗色を重ねた茶碗を愛好する茶人は、麗しいと汚いとの間を綱渡りしているわけね。
そりゃお茶やってない人は汚いと認識してもしょうがないわね。