釉から見たやきもの21 青磁考
十数年前、私は歯磨粉を単味で釉にしてみました。
カラー写真13はその時のものではありませんが、歯磨粉単味釉で昔のものとそっくりです。
(略)
そこで歯磨粉とはなんだろうと調べました。するとほとんどが炭酸カルシウムだとわかりました。
“それなら石灰石でいいではないか?”
今度はこう思って、石灰石、貝殻、卵殻、白墨で試みました。すべて色は望みどおりの青緑になりますが、高温が必要なこと、融けるとすぐ流れること、釉が少し溜りすぎると胎を破壊してしまうことなどの欠点があり、石灰岩単味で青緑色の釉を実用化するのはたいへん問題が多すぎると思いました。
歯磨粉の釉、というのもぶっとんでますが、写真でみると実はかなり綺麗。
美しい青が出ています。
ふつうの陶芸の教科書的なものでは、青磁釉は基礎釉に鉄二〜三%入れて還元焼成すると鉄は黄褐色の酸化第二鉄にならずに、微青色の酸化第一鉄に還元されて青磁の色が出る――といったふうに書かれています。
それもそうだろうと思います。
しかし、歯磨粉単味、石灰単味での青磁には鉄は入っておりません。
これはカルシウムの出す色です。
ヒスイ単味は低温でならヒスイに似た青緑を出してくれます。
これはひょっとするとナトリウムの色ではないかと思います。
そして、単味で焼いたらどんな汚ない色でも、灰を加えることによって平滑化され、気泡を生じ、色相は青緑化に向います。
青磁の色は鉄よりもむしろ灰にあるものではないでしょうか。
被覆力の弱い青い釉薬を、灰に混ぜる事で青いやきものができる。
とはいえ、青磁を還元焼成し損なうと黄褐色になるわけだから、灰が青の原因ではないんだろうけれど、灰の透明ガラス感がなければ青の深みはない、と著者は考えているのかな?