松屋会記に見る「炉と五徳」

昨日の「風炉に釣釜」の逆パターン。
「炉五徳スヘテ」という表記に関して。

久政他会記:

和暦 西暦 五徳据 全会数 パーセンテージ
天文 1533-1555 0 28 0%
弘治 1555-1558 0 33 0%
永禄 1558-1570 1 110 0.9%
元亀 1570-1573 2 20 10%
天正1 1573-1582 3 102 2.94%
天正2 1582-1593 7 91 7.69%
文禄 1593-1596 0 15 0%

久好他会記:

和暦 西暦 五徳据 全会数 パーセンテージ
天正2 1582-1593 3 55 5.45%
文禄 1593-1596 0 20 0%
慶長 1596-1615 0 78 0%
元和 1615-1624 0 30 0%
寛永 1624-1645 0 3 0%


我々は「釣釜じゃなきゃ炉には五徳が入って当然」と思っている。

だから「炉」か「炉 釣リテ」かせいぜい「炉 自在」の表記しか想定しておらず、わざわざ「炉 五徳据ヘテ」と表記する必要を感じない。


元亀〜天正松屋会記が「炉 五徳据ヘテ」とわざわざ表記するのは、炉に五徳が入っている状態をデフォルトと見ていないからだと思う。

つまり、囲炉裏から発展した炉は釜を釣るの「も」当然で、わざわざどっちか明記しなきゃいけなかったんじゃなかろうか?

んでもって、文禄以降は炉は五徳で当然という認識になっていた…ということなんじゃないかと思う。

天文〜永禄年代にほとんどないのは、そもそも炉が少ないからであろう。
会記の多くが釜の名称だけで炉とも風炉とも書いていない。
たぶん、風炉なのである。