美術骨董品投資の秘訣13

これは、ある故老から聞いた話であるが、当時一流の画家と書画屋との間で、極めて巧妙な贋作の取引が行われたことがあつたそうである。
例えば、その画家は渡辺崋山の系統の画家で、腕は一流である。
書画屋はこの先生に、崋山の偽物を描いてもらいたいたいのである。
然し、その画家は、当時の一流の大家であるから、はつきりそれといつては申し込めない。画家もうす/\その書画屋の気持ちは判る。

崋山と同様の絵が描けるが、崋山の値段では売れない画家、しかも当代そこそこの有名人の場合。

そこで画家は、毎朝揮毫前の筆ならしに、半折に崋山そつくりの四君子などを描いて落款(署名)は入れずに抛り出して置く。
そこへ書画屋がやつて来て
「先生これは何ですか」
「今朝の筆ならしだ、崋山先生とどちらが巧いかな」
「成程これはよい出来ですな、私戴いて行つてよろしいでしよう」
「あヽ御自由に」
というような順序で、この画に崋山の落款が書画屋によつて入れられ売り出される。

ううむ。腹芸の世界。

これなどは画家は一流の腕達者であるし、また普通の偽せ物のように卑しい気持ちも出ていないだろうから厄介千万な贋せ物である。

十分卑しいと思うが、厄介そう。
流派に属する画家は、先輩の模写から入るだろうし特徴呑み込んでるだろうし…。

…でも偽物と判明しないほど本物っぽいならそれは本物として通用してしまうんだろうなぁ。