君台觀左右帳記研究

松島宗衞/中央美術社/1931年。

戦前の君台観左右帳記の研究書。

君臺觀左右帳記は東山義政の支那畫に關する觀賞を筆録したる古書である。
即ち其名の示すが如く君公の台觀に供したる支那畫に就いての鑑記で、其左右に侍したるものゝ筆録であらふと思ふ。

本書の不思議さは、君台観左右帳記に関し後半部分…茶道具と飾りの部分をすっぱりと無視していることだ。
実際本書のほとんどの部分は、絵の作者の列伝である。

君台観左右帳記の絵の部分は義政の所蔵絵画のリストであり、評価順である、という主張において、書院飾りのやり方の話は将軍の語る話ではないからだろう。

斯く内外の不安動揺に拘らず義政は一面美術を愛好し文學を喜び、幾多の文化的施設を以て一世を風靡したのである。
(略)
即ち兆殿司の畫筆は巨勢流より出で宋元名畫の風格に入り、如拙周文に次いで雪舟の現はるゝあり、更に狩野正信其他の輩出するあり、珠光三阿彌(能相藝)松花堂及び後藤祐乗や祥瑞明珍等の名手を出して燦然たる光輝を放つたのである。
實に是等の大家名工手等は我邦に於ける古今獨歩の名聲を揚げたる人々である。
亦以て東山義政時代の文化状態を窺ふに足りると思ふ。

なんか本能寺の変のあった年に生まれて、寛永の頃に活躍した人が混じっているのだが…。
100年以上の時代を越えて影響を与えた、というのは言い過ぎじゃないですかね。