君台觀左右帳記研究4
曹弗興の佛畫に次いで君臺觀左右帳記に列記されたるは唐の呉道子と王摩詰とである。
此の二大畫家は古今の畫聖として知られたる人々で、今更説明を要せないのである。
呉道玄と王維摩詰。どちらも唐代の(伝承上の)有名画家、だそうである。
どちらの作品も現存していない。
東山御物の呉道子や王摩詰は果して現存するや否やは頗る疑問である。
勿論現下の我邦に於ては所謂呉道子と呼ばれ王摩詰と稱せらるゝ支那畫を見受くことがある。
然れども是等の繪畫は一見到底唐代の古畫なりと許すことが出來ないのである。
(略)
惟ふに東山義政の手に入れたる御自慢の呉道子や王維も果して眞蹟なりしや否やは頗る疑問であらうと思ふ。
かなり厳しい見方であるが、将軍の財力と格があっても、千年前の名画を手に入れるのは厳しい。
これが明王朝に所蔵されたものが贈られた、とかならあってもいいのだろうけど、それなら明側に記録が残る筈。
普通の貿易で手に入れるなら、その真贋は相当怪しくなってしまう。来歴の怪しい道具って奴である。