茶道具の用と美8

二人の茶道論。

林屋 (略)お茶の世界にとって重要なのは好奇心というものですよ。だから、好奇心を起こさないようなお茶を、いま、一般にしているんですよ。点前至上主義でね。点前では好奇心が起きないよ。縮こまるだけだよ、本当に。むしろ好奇心を抑えようとしているんだよ。
小田 人間ですから、点前をしてもらって、物を見せてもらうということは一つの演出だから、あんまり不真面目にやられたんじゃおもしろくないですけど、一生懸命やってもらって。上手、下手は別として。
林屋 また調子のいいことを言う(笑)
小田 というのは、ある人のお茶に呼ばれて、すごく横着なんですよ。「私は道具を見せりゃいいんだ」と。
(略)
小田 「別に点前なんかどうであろうと、道具だけ見てもらえば」というようなことでやると、それがありありとその人の点前に出ているんです。
林屋 嫌だね。自堕落ですね。自我はいけない。
小田 そうそう。やっぱり下手は下手なりに一生懸命やっていただくことに意味があると思いますね。

お点前の上手さは必ずしも数寄風流に必要なものではない。

数寄であり、風流であることがまず大事で、そっちを放置してお点前上達に一生懸命になる風潮に危機感を感じている。

しかしながら、下手なりに真面目で一生懸命でなければいけない。

林屋 ゴルフの方が入りいいし、勝負があるしね。お茶の世界には勝負がないんですよ。本当はもっとすごい勝負があるんだけど、直接的な勝負がない。
小田 利休さんの周辺なんて勝負の連続ですよ。

お点前至上主義による茶道の形骸化って、言われて久しい気がするけど、解決の道ってないよね。
道具を集めて、勉強して、茶事って言う成果を出すのに比べて、お点前の精度を上げるのはずっと感嘆で安易な求道だからね…。