新修裱具のしをり8

裱褙、幢褙、輪褙の他の、いろいろな表装を紹介した後の一文。

表具の様式は一般に従来の式が墨守されて居るが、それらの式にて満足せぬ時は以上の様式を標準として、各人の好みによって自由に新しい式を試みるべきである。

こういう本を書いた碩学としては、えらくフリーダムである。
「満足せぬ時は」のフレーズが味わい深い。

画表具・織出表具など称するものがある。
表具師の仕事ではないが、心得置いてよかろう。
即ち画表具と云ふのは本紙と表装とを一つ材料にして、表装とを一つ材料にして、表装の各部を描いたのである。田中日華の雪月花に、本紙に月を画き、天地中縁に雪花を現はしたのがある。此等は殊更画家の意匠を凝したものであらう。

で、自由に新しい式を試みるには、「表具師の仕事ではない」表装(もどき)の知識も要る。
実際的である。フリーダムになるには裏付けとなる知識も必要なのだ。
バカがバカをやってもフリーダムはフリーダムだがやっぱただのバカで、何かを生み出すには勉強が必要なのだ。