天目茶碗考9

曜變

君臺觀左右帳記に建盞の内の無上也、天下におほからぬ物なり(略)
(略)
元來支那には窯變の字はあるが曜變の字はない。
されば音の同じき為に假借して曜の字を用ひたものと思はれる。
(略)
さすれば窯變は即ち火變りの事で其内には種々のものを含み、特に之を一の小分類中に列すべきものではない。
(略)

曜変は、窯変の転じたものである。

つまり窯変という意味では油滴等も含んでしまうが、そうではない、と言いたいわけだ。

窯変は人工的に之を造りたるものか将又窯中に於て期せずして出來たものか、と云ふに今泉、三宅二氏は之を人工なりと説かれた。余も亦之に同意である。
しかし余の考へでは窯変の始めは偶然に現はれたもので、後に工夫を凝して略好みの如く之を造り得るに至つたものかと思ふ。
其始めに於ては之を妖即ち不可思議の物として廢毀した事が書中に見えて居る。

饒州景徳鎮陶器所自出大觀間有窯變、色紅如朱砂、僉謂焚惑纏度臨照而然物反常為妖窯戸亟碎之(陶説)
(略)

「窯変」は、妖怪のしわざと考えて壊していた時代があると中国の記録にも残っている。でも、この窯変が曜変と同じかは判んないんだよね。
少なくとも上の例文は景徳鎮だから、曜変ではなさそうだし。

そういう意味で曜変天目がどこから来て、輸入元でどう扱われていたかはさっぱ判らんということだ。