第4の曜変天目
一日経って、中島誠之助の評価が、すとんと納得できた。
んで、東洋陶磁のキュレーターが文句をつけて炎上中。それも納得できる。
なぜならこの二者の評価は別の軸で行われているからだ。
「鑑定団」の評価軸は、「その道具をその値段で買い取れば俺等道具屋は他に売りさばけるよ」という評価であって、学術とは関係ない。
その意味で「福建省の建窯で焼かれた曜変天目に間違いありません。2500万です。」という評価は、非常に面白い。学者だったら「福建省の建窯で焼かれた」の所すら断言できない筈だ。証拠が無いもん。
あの茶碗を、茶人の目でもう一度確認しよう。
実物を生で見たわけではないが、テレビで鹿の映像を見て馬という人はいない。そのぐらい顕著な特徴が、あの茶碗にはある。
全体のフォルムは、一応天目形である。しかし、すっぽん口の彫りは甘く、高台脇に幕釉も確認できないから、釉薬は薄そう。そして何より、海鼠肌である。曜変どころか禾目でだってこんなざらざらした建盞は見たことがない。
一応曜変らしき星が碗の外を巻いているが、美しさのかけらもない。ただし生で見るとこの部分は評価が変わり得るが。
伝来は「怪しい」。
これだと茶道具としては、使いたくないし、出されたくない。
番組の鑑定人も、現代近代の「曜変再現者」の作風と比較しただろう。んで、合致しなかったんだと思う。
となると、「知られざる過去の日本人の模倣作」の可能性が出てくるが、学術的には存在する可能性があっても、道具屋的には「日本人は真似できなかった」ことにせざるを得ない。
すると必然的に唐物って扱いになり、道具屋界では「唐物天目=建窯」なので、ああ断言せざるを得なかったのだろう。
だが価格評価の方が正直で、「ゴミです」と言っているに等しい。
2500万なんて、茶道具では大したことがない。のんこうの楽茶碗でも700万くらいするのだ。2500万ってのは国宝曜変の、おそらく100分の1以下の評価である。
「なんだか赤いボロ車が倉庫から見つかって、フェラーリって書いてあったんですが、幾らで買ってくれます?確かフェラーリって何千万もしますよね」と外車ディーラーに聞いたとする。
ディーラーが「ああ、これはフェラーリですね。中古価格は20万です」と言ったらこれは喜んでいいものだろうか?…価格こそが正当な評価なのだと思う。
稲葉天目が大正時代に競売された時の落札額は16万5000円。現代の価値で16億にはなるだろう。今回の茶碗は「そこまでの値がない」というのが道具屋の評価。
あの茶碗、正直茶道具としては使えない。
「是非美術館へ寄贈してください」とも言われなかったから、美術的価値も少ない。
来歴も不明だから、歴史的価値も不明。
でも、学術的には価値があると思う。
東洋陶磁美術館はこの茶碗を買い取って、曜変部分の破壊検査を実施するといいと思います。なにせ重文にすらなってないんだから。壊してオッケーっすよ。
NHKが取材費として出して、もっぺんドキュメンタリーとってもいいんじゃない?