茶匠と建築5

織田有楽の話。

茶に対する有楽の見解を、直接記した聞書のようなものは今のところ知られていない。しかし、有楽の流を汲んだ弟子たちの著わした書のなかに、有楽の考えをかなり伝えたものがある。
(略)
そのなかで有楽は、

それ茶の湯ハ客をもてなす道理を本意とする也

と述べていた。

茶の湯とは持てなしの形式をもった勝負事であり、ポトラッチに近い存在なのだと思う。
でなければ常釜をしたりしないし、「ぬるい」と悪評が立ったりしない。

そんな風潮の中で、有楽は独自の境地に達していたと思う。

あくまで「客をもてなす道理を本意とする」茶道観に立つ時、おのずから「二畳半一畳半などハ客をくるしめるに似たり」という考え方にならざるをえなかったのだろう。

そんな考えで作られた「如庵」は、鱗板に象徴される実用本意とコンフォートがあって、二畳半台目という狭さが感じられない。

これで豊臣方の実質ボスだった(最後逃げたけど)という経歴がなければもっと茶の湯の交流が進み、彼の茶風が茶の湯の主流に食い込んでいたかもしれないと思うと、少々残念である。