日本茶の湯文化史の新研究11

山上宗二記」(酒井巌氏所蔵本・天正十八年成立(略))に、

一 宗易愚拙ニ密伝、就御懇望不残心底、十ヶ条書顕者也、コヒタ タケタ 侘タ 愁タ トウケタ 花ヤカニ 物知 作者 花車ニ ツヨク

とあり、この十の語句の精神を体得した人を名人「上手ト云」とある。
この十ヶ条は宗二の懇望により利休から茶の湯の精神の根本を秘かに伝えられたものであるが、茶道史研究の上で重視されたことはない。
この利休秘伝が看過されてきた理由に、それぞれの語句、特に抽象的な語句の正しい認識が困難であることが挙げられる。

という文から始まる、媚びた、異風、道化たという美意識に対する研究。

それらを茶書、特に会記からひっぱりだし、検討するという内容。

難しい。難し過ぎる。

媚びも異風も道化たも、必ずしも否定的な意味合いでないようだし、それらの概念を大切にする茶の湯、というものがますます判らない。
現在考えられている茶の湯の概念に収まりの悪い概念を無理矢理詰め込むか、それとも茶の湯の概念が違っていたと考えるか…。


私にもよくわからなかった。難し過ぎて引用もできない。


だが、一つ言えることがある。

これらの十ヶ条の概念にくらべたら南方録は判りやすい。素晴らしい文学的才覚で書かれていると思う。

媚びた、という概念は杉木普斎も使っていたようだが、南方録には出てこない。
おそらく上方の町方に伝わる美意識で、元祿の武士の茶には失われた要素なんだろうなぁ。