南方録13
○メンツノコボシ、トヂ目ヲ前ニセヨ、引切ノ蓋置モ目ヲ前ニセヨト、宗易ハノ玉フ、又道安ハ、トヂ目モ蓋置ノ目モ客付ニセヨトナリ、イカヤウカ決定スベキカト問候
ヘバ、
易云、惣而道具ダヽミニテモ棚ニテモ、道具ヲカザリツクニモ、炭ヲツギ茶ヲ立ルニモ、道具ヲ我身ニ對スルコト也、置合タル道具モ、客ニ見スル為ニアラズ、マシテ所作ノ内ニ客付ニ見スルヤウニ取アツカフコト、ユメ/\アルベカラズ、
道具の向きをどうするか。
利休は自分に正面を向けるといい、道安は客に正面を向けるといった。
どっちにすればいいか確認したら、利休は自分正面にしろと言った。
わざわざお点前途中で客に向けるように所作をするのはやめとけとも言った。
サラバ茶入モ横ヨリ客ノ見ルヤウニヲクベキヤ、コハレテ見物ニ出ス時ハ客ニ對シ面ヲムケテ出スコト勿論也、カヤウノ事心得ノ第一ナリ、
茶入も客から見えるようにおくんですか?拝見の時はそりゃそうですけど。
コトニ蓋置ハ、能阿弥ノ臨濟ヲ置テ茶立ラレシニモ、印ノ文字、我ヨムヤウニシテ、柄杓ノエニツケヨトコソ傳授承候ヒシ、生類ナトモ同前也、
竹ノ目ヲ客ノ方ヘムカユルナラバ、印ノ蓋置モ客ノヨムヤウニ置ベキヤ、
カタ/\違逆ノコトナリ、メンツモ目モ我前ニシテ本意ナルベシト被申シ、
さて、道具の正面を客に向ける、という原則があった場合、茶室の構造によって道具の向きがあっちいったりこっちいったりしかねない。だから点前座に向けるのは無難な処置であろう。
この話の一番の問題は、宗啓が、利休の教えと道安の教えを聞き、どっちが正しいのか利休に尋ねたことかもしれない。
利休の弟子なら道安の言うことなんか聞かないし、それを書面に残して利休に確認を取ったりしない筈なんだが…。