青首鴨

茶道全集巻の七 懐石篇、「料理の今昔」栗山善四郎より。

羅漢会、鈍翁や松浦心月を客に招いたある侘び茶人のエピソード。

ところが其の侘茶人は清貧洗ふが如しといふ中から、うんと奮發して其日の椀盛には上等の青クビを使つたのです。連客は「こりや鴨らしう見せかけてあるが相鴨に違ひない」と冷笑を洩らしてゐるのを水谷で聞いてゐた亭主は心外で堪らず何か返報して呉れやうと一計をめぐらしたものです。それとはしらない連客は茶が終つて歸へらんとする細小路の植込の上から、なにやらポタリと落ちる氣味の惡いものがあるので思はず仰いで見ると、正眞正銘の青首が吊されてゐて切口から血がにじんでゐるのです。
「ヒヤー之は家鴨といつた返報、思ひ知れといふ鴨の獄門とこそ」とは一同恐れ入つたという逸話さへあります。

昔の茶会というのは殺るか殺られるかといった真剣勝負の場所。女子供は、すっこんでろってな雰囲気ですなぁ。

…それともいまでもこんな事があるんじゃろうか?