笊で水をくむ 茶人・金津滋の生涯
三鬼英介 著。
現代の茶道に反感を抱いた著者が、現代茶道の病巣を「家元制」と考え、松江の茶人金津滋に「反家元」的なものを期待して接近。病床の金津にいろいろインタビューするが、要領を得ないまま金津は死去。金津のコレクションが散逸しない様奔走するが、うまくいかなかった…的なお話。
この作者、いろいろ間違っちゃっている。
まず思想的なもの。
超流派の自由茶人は家元に反抗する必要は別にない、というのが理解できていない。
家元に反抗する、的な意識は家元の権威の下に居る人が言う事。
家元の権威の下にいない人間には「家元?それがなにか?」で終りなのだ。
焚き付ける方がおかしい。
あと、終章をまとめる為だかしらんが、金津コレクションを救うためになぜか奔走する作者。
銀花から金津の
美術館や博物館に見る道具は"茶"の道具のうつせみ、あわれ、人形芝居の楽屋に吊されし人形と変りやはある。
という文章を引用しておいて、全然判ってねぇ。
そして、技術的な問題。
茶への知識が不足した状態でインタビュー。このインタビューが拙すぎて、金津から有用な文言を全然引き出せてない。
おっと思うのは以下のセンテンスくらい。
「(前略)『茶』に明け『茶』に暮れるのが『茶』です。忙しくて仕事などしている暇はない。今盛んなのは余暇にやる『趣味の茶』、『茶』ではありません。(後略)」
いまいちと自分でも思ったのか、銀花に金津が寄稿した文章を大量引用している。ならわざわざインタビューに行く意味なんてねーじゃんかよ。
ま、結構駄目な著者の本でした。
ただ、金津滋に興味があって、かつ、銀花の二十八号とか四十四号とかが入手できないなら、買ってもいいかもね。
- 作者: 三鬼英介
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2005/11
- メディア: 文庫
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