懐石料理とお茶の話 八百善主人ものがたり5 釜
私の目から鱗の落ちた話。
今日やたらに鎌倉時代の芦屋釜だとかと騒ぎますが、鎌倉時代の釜ならばとつくに底がぬけています。
底の抜けた釜は大概屋外に捨てられて了います。
その底を入替て大切に使う様になつたのは茶道が勃興してからのことですから、三百年間(鎌倉から織豊時代迄)に大概の釜はくさつて了つたと思います。
そりゃそうだ。
鎌倉時代の釜で、肌は荒れているけど底が入れ替わっていないってのも美術館では結構見る。底があるってことは使っていないという事になり、何百年も釜を使わずに保存するなんてあり得ない。
使ったら底が抜ける筈で、そうなってしまえば直さずに捨てる時代だろうから残らない。
もし底を直してあったらそれはそれで「なぜ釜なんぞをわざわざ直して使うの」か判らない。
…なるほど、物の道理ですなぁ。