茶道客の心得3 正客と末客

この本では、大寄せや掛釜での作法に結構なスペースを割いている。

さて人數が揃ひますと「どうぞ席へお通り下さい。」といふ案内がありますから上客、お詰(末客)を定めて席に通るのです。

大寄せであれば、その場で正客が決まるのは当然だとは思う。

この席順は、先客順にしてもよいのですが、人數の中に、老練な茶人、または知名の人等がゐられた場合は、例へ遅くれて來られても、さういふ人を上客にします。初歩の方は、なるべく、老練な人の間にはさんで貰つた方がよろしい。

だが、私の経験では、こんなうまいこと正客は決まらない。
老練の人は、老練にも正客を回避する技に熟達してしまっていたりするからだ。

戦前はうまく行っていたのだろうか?…おそらくそんな事はなかろうと思うが。

又、若い人ばかりで、自分だけが年かさであつたり、婦人ばかりの中で、一人だけ男子だつたりしますと、茶會に慣れてゐる慣れてゐないはとにかく、上客にすゝめられる事があります。
かういう時は、一應は辭退して、それでも、たつてと云はれた場合は「何もわかりませんからみなさまお教へ下さい/と云つて、上客になり、辭退ばかりして餘り時間をとらないやうにします。

で、ですよね〜。

お詰めと申しますのは、末客の事で、お詰めは、皆が席へ入つた後の始末とか、皆の代りに色々と働かねばなりませんから、これ又、場所によく慣れた人がよいので、初歩の人が、遠慮して、一番末座になつたりすると、とんでもない事になりますから、注意せねばなりません。

…。

戦前は大寄せで末客が何かさせられる、なんて事があり得たのだろうか?

私の経験では、大寄せの場合、そもそも座敷のどこが末客なんだかさっぱり判らないという事の方がありそうなのだが…。