鹿児島鮨

田中式豚肉調理二百種/田中宏/博文館/1913年。

大正2年に博士の書いた豚肉料理の本…だが、豚肉料理は今回関係なし。
巻末に載っていた鹿児島鮨、別名「酒鮨」を作ってみた。

どういうのかというと:

全体鹿兒島鮨は一種特別の鮨でありまして春季梅、桃、櫻の時分を選んで漬けるもので極めて陽氣な食物と致してあります。
夏、秋、冬には殆んど漬ける事はありません。殊に陰氣な場合には絶無であります。
春暖き日に廣間の障子を開け擴げ庭園を眺め乍ら、又は庭園櫻の下や丘の上或は芝生に薄縁、毛布、絨毯抔敷き此所に持ち出して家族、親類、友人の老若男女打ち交り、陽氣なる談話と共に食べますのは誠の愉快なことでありまして、普通の鮨の樣に間に合はせの食事代りや又はお茶請の目的に食するものではありませぬ。

こんなお寿司。男尊女卑の時代に女が公然と酒を呑む代わりに考案された寿司だともいう。

此鮨の漬方を申上ますれば材料は米と鹽と鹿兒島酒(中略)若し無ければ鹿兒島酒の代りに普通の酒と味醂を半々に雑ぜると似寄ったものが出來ます。

使ったのは東酒造の黒酒。物産展で購入した。


作り方は簡単で

  1. 鯛の切り身を一塩してから鹿児島酒につけこむ。
  2. 蒲鉾などの具材を塩と鹿児島酒で煮て味付け。
  3. 冷ました飯にじゃぼじゃぼ鹿児島酒を注ぐ。ひたひたより多いくらいで。
  4. 上記の酒飯と具材を層にして容器に詰める。
  5. 短冊状に切った薄焼き卵を上に載せる。
  6. 軽く押しを掛ける。

この程度。

3時間ほど放置したところ、じょぼじょぼ注いだ鹿児島酒がすっかりご飯に吸われている。おそろしす。

なお具は鯛と蒲鉾と蓮根を使った。もっといろいろ入れた方が美味しいと思うが、分量少なくテストで作ったものなので、具も小量。


味は…おいしい…のか?とちょっと疑問符付き。酔っぱらうのはまちがいない。
胃の中で米からアルコールがゆっくり出てくるような感触。
灰汁独特の癖のあるほんのり甘い飯。、灰汁巻とかが好きな人にはいいのではないか?

又鯛の骨に鹽にしたるものは汐煮(豆腐のやつこに切りたるもの及菜など入れてもよろし)にして鮨を喰べる時に熱くして出します。

鮨に癖があるのと、鮨自身に塩分を多く加えるとくどい味になる気がするので、鯛アラの吸い物といっしょなら美味しくいただけるかも。
今回は吸い物は作らなかったので真の評価はできていないかもしれない。


ちょっと面白いので、点心とか野点の弁当にはいいかもしんない。