高谷宗範傳24 草庵の食礼

今日我國民一般の飲食を觀るに、一定の禮式を備へたる者あるを見ず、

ということで、食事作法にも改善を加えようとしていた宗範。

草庵と書院、懐石を基本としている。

まずは草庵の作法の、現代と違う部分を見てみよう。

概ね同じなんだけど杯事が違う。

一 主人左ニ引盃五枚ヲ臺ニ載セテ持チ、右ニ酒銚子ヲ持チ上客ノ前ニ坐シ、
引盃ヲ臺ト共ニ上客ノ前ニ出シ一献呈上ト云フ、此時引盃第一上部ノ一枚ニ
水ガ入レテアル

膳を出した後、亭主は一番上に水を入れた杯台を持ち込む。

一 上客引盃ノ第一ヲ取リ揚ゲ、其中ニアル水ヲ第二ノ盃中ニ移シ、右手ニ盃ヲ持ツ、主人銚子ヲ右ニ持チ上客ノ盃ニ注グ

こうやって上段の水を捨てつつ?亭主が酒を注ぎます。
末客は杯台の中心に捨てます。

風情があって面白いかもしれませんな。


んで、食事が一通り終ってから、八寸を持ち出します。

一 主人左ニ取肴ヲ持チ右ニ銚子ヲ持チ出シ上客ヨリ順次酒ヲ侑メ取肴ヲ吸物椀ノ蓋ニ盛リテ供ス
注意 一 新來ノ客ニ對シテハ此時主人献酬ス其他ハ酒ヲ注グノミ

初めての相手の時のみ、杯を交わす。千鳥ではない、というのがミソか。

なお:

一 客皆香物ヲ食シ湯ヲ吸ヒ終リテ後箸ヲ膳ニ落シテ音ヲ成ス、末客ハ先ヅ香物鉢ト湯桶トヲ給仕口ニ置ク
一 主人箸ノ音ヲ聞キ給仕口ヲ披キ

「箸を落す」は昭和6年にまで遡れることが確認できました。