釉から見たやきもの18 灰と名のつくもの

まず灰をその原料によって分類すると、植物灰、動物灰、石灰およびその他と四大別できます。

というわけで灰の話。

■植物灰

これはさらに植物の種と植物の部位とによって分けられ、その数は種の数×部位の数として考えられます。
(略)
この植物の部位の方は数が少ないので概説的な傾向が書けます。
・根 比較的燐酸分が多く、焼くと光沢に富む。
・幹 珪酸分が多く、融け流れが他の部位より少ない傾向がある。
・樹皮 石灰分が多く、流動的。
・葉 葉緑素の成分マグネシュウムにより黄色化することが多い。
・花 ――研究中――
(略)
こんなに多くの種類があるのに、古来陶工が使ってきたものは極めてわずかな一部分のものです。あとの大多数の灰は顧みられずに未開拓のまま残されています。
だから灰はまだ処女地であり、陶工の夢を誘う大きな可能性を持っています。

灰と言ってもいろいろある、というのはちょっとした驚き。
そう言われればそれもそうなんだけど。

■動物灰

ふつう灰として利用されるものは、内骨骼および外骨骼です。骨とか貝殻です。
これも牛の骨、鯖の骨、卵の殼、蛤の殼、サンゴの遺体などと勘定すると相当な数にはなりますが、焼いた結果はいずれもよく似ていて、植物灰での籾殻と樺の樹皮とに見られるような大差はありません。
(略)
動物の骨骼以外の部分はたいへんおもしろいものだろうと想像していますが、ただ想像するだけで実験が極めて少なく、公表できる段階になっておりません。
ただ冗談を一つだけ書いておきますと、ホヤは血液に相当のバナジウムを含んでいると本で読んだので、うわぐすりにしょうか、それとも食べようかと、と迷いましたが、結局食べました。

こっちはこっちで我々が「カルシウム」というものを焼いている「限り」、あまり変わりはないということね。

■石灰
(略)
こんなふうに小差はありますが、われわれが一般に石灰として使っているものは、一応みんな同じものと考えてよく、日本全国に通ずる客観性があります。
(略)

なるほど。

■そのほか
ものを燃やした灰ではないのに、釉を作る時にアルカリの役目をするものを「灰」と名づけることがあります。
福岡県上野、岡山県伊部、愛知県常滑などの窯場で塩から摂るアルカリを「塩の灰」との言葉で表わしています。
(略)

塩釉も「アルカリ」で、古来扱いは「灰」だったのか…。
確かに塩釉は、ちょっと味わいの違う灰釉みたいだが、同じ扱いだったのね。

窯の中で自然とかかる自然釉…。そんなものしかイメージしかなかったんだけど、灰釉といっても、いろんなものがあるって判りました。

でも、茶人の実用として「おお、この釉は椚の樹皮ですな」みたいな鑑定にはつながらなさそう…。