天目茶碗考12
○灰潜
君臺觀左右帳記に、世間にまれなる物にて候、見やうに口傳多し。
今泉氏は窯中釉の溶解の度を失ひ、十分の光彩を發せざるものを云ふ。其内緑色を帯たるを本邦茶家、蓼冷汁と稱す、と記された。蓼汁を懸けたるやうに青みあり、と書いている。
(略)
又、茶器名物集に、一天目之事紹鴎所持ノ一ツ白天目一ツ。天下ニ三ツ、
内二關白樣ニ有、引拙ノ天目堺油屋ニ有、何モハイカツキ此外ハイカツキ方々ニ有
(略)
即ち其多き事を知るべく、又白天目は灰被の内の一種なる事を知り得るのである。
灰かつぎは、分類としてはよく見るが意外に実物を見ない。
上記説だと焼成不十分な天目という事になるが、文化遺産オンラインだと:
http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/140797
発色の充分なものが伝世している事になる。
どっちやねん。
蓼冷汁、白天目もこの分類に含まれてしまうのか…。白天目なんて焼成不十分とかとまた別のものな気がするが。
○黄天目
君臺觀左右帳記に、ハイカツギニマギルゝ物ニテ候、大ニチカヒタルヤクソク有之、尚口傳多シ。
黄天目は又黄盞とも云ふ。
茶器名物集ニ、是ハ灰カツキニヲトリ候。今泉氏は白土の天目に白黄色の濃厚の釉をかけしものにて品格高尚なり、蔡襄の茶録に、建安所造者(中略)其青白盞闘試家不要とあり、黄天目は青盞の變化せしもあのか、云々と説かれた。
茶道筌蹄には藥溜りの端に黄色ありと云つて居るが、此説は今泉氏の説とは異つて居る。
余は黄天目の實物を見ざる故にどちらの説が正しきや
(略)
石川県立美術館の所蔵品:
http://ishibi.pref.ishikawa.jp/collection/index.php?app=shiryo&mode=detail&data_id=84
飴釉なのか…?
焼成不十分によるものか釉掛けしてあるのかとか関係なく、とりあえずこれらの天目は「黒くない」天目としてまとめられている様だ。
当時から茶人は完成された建盞から、離れよう離れようと画策していた事が判る。