天目茶碗考13

○唯天目

君臺觀左右帳記に、世間に多き物にて候、これもころなり、藥能候は重寶に候。
(略)
右等の記載に依り考ふるに、此天目は灰被の下等品で、義政公御使用なかりしと云ふ位のものにて、釉色模樣等特に取り立てゝ稱すべきものでない。

つまりただの天目、という文字通りのもの。

遵生八牋には、建窯の大食窯を以て窯之至下者也、と記して居るが、支那に於て下等品なりと見居るものも、我邦人殊に茶人の趣味の上より見れば必ずしも之に一致せりと定むる事は出來ぬ。

つまり、台子のお茶につき物の天目茶碗、真の道具といえど、中国の感覚では下品。
それを珍重したのは日本の茶人の「ちょっとおかしい」感性の為せるわざ。

そして、さらに草のものに趣向は移っていき、実用上としては天目は廃れた茶碗になってしまった。

支那明代頃の人は建窯製品を我邦人の如く珍賞せず、現に景徳鎮にては古代の各窯製品に倣ひて其模製品を造つたが、建窯のものは造らなかつたのを見ても此事が推知される。されば唯天目は烏泥窯の製品なりや将又大食窯の製品なりや明瞭ではない。

つまり、中国では偽物すら造られない人気のない茶碗だった、ということ。

ということは舶来したものは真正のものって事になるんだから、日本としては万々歳なんだけどね。