実山の動機
南方録には、大別して三つの位置付けがある、と私は考えている。
場合分けとしてはこんなもんであろう。
九州の事蹟が多いなどの理由で、私は実山の周辺が書いた偽書であると思っている。
んで、ここで疑問なのは「実山はどうしたかったのか」である。
実山はこの本を出版していない。
それどころか極めて限定的にしか写本を許していない。
しかも写本先は身内で、写本の許可に大枚を積ませるというビジネスでもなさそう。
南方録に載っていたいくつかの茶道具を実山も持っていたが、生前売ってはいない。
つまり金儲けが目的ではないだろうと思う。
実山は利休の茶書、という権威を得て、福岡藩を牛耳ろうとした?
でもすでに寵臣という最高の権威を持ってるし、その上で織部流の人間に陰口叩かれるという、むしろ弱点になっている。
実山の行動からは、南方録を利休の茶書として崇め大切に守ろうとしたという方向の行動しか見えない。
実山は実山周辺の誰かが書いた偽書に騙された、善意の人間だったんじゃなかろうか?