日本の茶家

井口海仙、久田宗也、中村昌生、編。

各流派の偉い人が、自流派を紹介した本。

遠州流の説明には、遠州流五世政峯は養子を得て六世にしたことが書いてある。んで小堀遠州流の説明には、小堀遠州流六世政郷は嗣子なく死んだので、親戚の遠州流五世政峯から嫡子を順に二人も養子にもらったが、その辺の事情は不明、と書いてある。つまり、なぜかは判らんが小堀遠州の直系は小堀遠州流にある、となる。なんで嫡流の子供をプレゼントして、嫡流を譲っちゃったんだろうなぁ。

細川三斎流も短い紹介ページをもらっているのだが、別のところで細川護貞さんが細川三斎流に関しては、会った事もないし知らん、と突き放している。これは辛い。

こういった、他流派に対する遠慮なく書いているものを、配慮なく載せている感じが面白い。

でもここは計量書誌学的にチェックするぜ。

流派 本文ページ数 著者
表千家 32 千宗員
裏千家 34 井口海仙
武者小路千家 24 千宗屋
藪内家 26 藪内紹春
遠州流 34 小堀宗慶
宗偏流 26 山田宗囲
庸軒流 30 宮川祐宏
表千家久田家 18 久田宗也
表千家堀内家 12 堀内宗完
松尾流 24 松尾宗倫
不白と江戸千家 44 川上閑雪、川上宗雪、川上宗順
三斎流、肥後戸流、一尾派 24 細川護貞
有楽流 20 織田長繁
織部 16 浅野牧仙
小堀遠州 4 小堀宗通
上田宗箇流 16 上田宗源
宗和流 12 辰村宗悦
石州流 12 片桐貞泰
鎮信流 16 松浦祥月
不昧流 24 手銭白三郎
日本茶道学会 20 田中仙翁
速水流 24 林左馬衛
玉川遠州流 16 大森宗晋
古石州流 6 本庄宗益
石州流伊佐派 2 磯野宗琢
御家流 6 安藤綾信
細川三斎流 4 高樋宗其
珠光流 12 衣斐賢譲
志野流 4 藤井宗生

このページ割が、この本出た時の、裏と表の二人の編者の考えた茶道世界の序列を反映するもの、と考えていいだろう。

  • 表とその分派にたっぷりページが費されている(計160ページ)
  • 三千家、主要武家、千家分派、その他武家みたいな順。武家の筆頭は藪内。

表の分派の分量と順番に関しては、庸軒流がやたら多かったり、松尾流が少なかったり、江戸千家の扱いが断然高いのとかが非常に興味深い。

速水流にページが多いのは、数少ない裏の分派だから?

石州流扱い悪い。大日本茶道学会は実質一番最後(速水流以降は補遺編扱い)でページ数も含めるとかなり悪い扱いかも。小堀遠州流は、補遺編に入りそうなものなのに、本編の中盤にあるのは血筋への配慮?

その辺の邪推すると面白いですね。

俺が編者なら

こんな感じにするなぁ、きっと。