古文書の読み方4 解読

では実際に読んでみよう。

私のやり方は、コピーした古文書に、消えるボールペンのグリーンで「判った字」を書き、ピンクで「怪しい字」を書いていく。

1. まず辞書無しで最初から読む。
2. 「判った字」をとりあえずグリーンのペンで記入
3. 「怪しい字」をバイオレットのペンで記入
4. 最後まで読み切る。

するとこんな風になる:

「又持出○銚子」とか「茶道?口〆○時」とか「主人も」とか「挨拶す○也」とか、読めると思う。

実はくずし字の文章でも、全ての文字がくずされてて読めない、なんて事はない。楷書に近い部分もある。判るとこから部分的に訳して行けばいいのである。


大事なのは判らない字があっても最後まで読み切る、という事である。

最後まで読み切る事で、いろんな糸口がつかめる。

  1. ある程度文脈が判る。その文が腰掛待合に関する物か、懐石に関する物か、そういう全体像が判れば推測も進む。
  2. 同じ形の文字が見つかれば、推測しやすくなる。
  3. 筆者の文体、くせ字の方向性に慣れる事ができる。

この文書は懐石の出し方に関する文書であると判る。



んで、2巡目からは辞書を引く。

5. もいっぺん最初から読む。
6. 「怪しい字」「判らなかった」字を辞書で引き、判ったらバイオレットの字を消してグリーンで記入しなおす。
7. その字を追いかけながら最後まで読み切る。

あとは「判らない文字」がなるべく無くなる様に5〜7を繰り返す。


頻出パターンは解読の糸口である。みつけたら前後の文脈を見て、その文字を推理する。



上記の文字、隣の行で同じ字形が出ているが、「××の戸」「××の前」とかの言葉が出て…とか類推して行くと、“くぐり”である事が判る。


茶に関してはドメイン知識が有るから、結構推測しやすい。


こういうのを繰り返して行くと、段々辞書無しで訳せる文字が増えて行くと思う。さすがに「覚えられない」という人はどうにもできないが…。


私は今、この辞書無しの最初の一回で、6〜7割の字が判る。でも最初は1割くらいだった。

どれが一文字の単位なのかすら判らなかったが、今ではなんか勘で判る。


どうあがいても訳せない字ってのは1割くらい残ってしまうが、「いいんだよ、いい加減でも意味取れれば」ぐらいの気持ちでやればいい。目的は文字を一対一翻訳する事ではなくて、文章の意味を取る事だから。
気楽にやった方が勉強進むと思う。


なお前から一文字一文字辞書引いて、完全に判るまで先に進まない、というやり方ははなはだマズい。判らない文字に詰まると先に進めなくなる。やる気も急降下するしネ。