古事類苑9 略手前

貞要集より:

一 略点前と云は、有樂流の極秘にて貞置候○織田も、むざと傳授は無之候、
御門弟の内二三人ならでは知人無之候、
總而手前の内に我人忘るゝ事是おほし、此略手前は忘たる所を手前の其一ツに用る事也、
或は釜の蓋を先へとり、茶入をアト*1に取、茶杓を置わすれ、柄杓を遅ク取、茶調候内、色々怪我有之時、手前をたて直ス作法也、
極秘なれば書面に難知、傳授なくては難成事也、
貞翁常々被仰候は、茶の立前道具の置合等、如何にしても不苦と清談ありしも、此略手前有之故也、
茶湯を我物にして發明自由ならねば、右の手前は難立依之初心の人に許ては、手前猥に成申ゆへ、其仁の器量次第に傳へべしとて秘事し給ふ事也、流儀の事理融通成事志らしめん為に、有増書記者也。

御門弟の数人しか知らないが、有楽流には略点前という秘伝がある。
点前の最中に忘れる事がいろいろある。そういった時に使う技である。
釜の蓋を先に取り、茶入を後に取り、茶杓を置き忘れ、柄杓を後で取ったり、ミスの多い時のリカバー術である。
貞置候が「道具置き合わせなんて適当でいいよー」とよく言っていたのはこの略手前のおかげである。
しかし初心者がこの技を使うのと手前が乱れるので、実力を見て伝授すること。
あらましを記してみました。

…ってこと?


し、知りてぇっ!

この技があれば、茶杓を茶碗に置かずに持ち出してしまったり、蓋置を前へ出し忘れたり、家に帛紗を忘れたのをなんとか出来てしまうのね!


しかし、上級者しか使えないリカバー技ってどういう事よ。上級者は上級者なんだからイージーミスすんなよ〜。「我人忘るゝ事是おほし」じゃねーよ。

*1:しんにょう+亦