絵巻切断7 中務の章

高度経済成長が過去のものとなるにつれ、三十六歌仙をめぐる世界にも新しい現象が目立ってきた。
歌仙図の持ち主が、個人から法人へと変り始めたのである。

企業の持つ歌仙図に対する本章。


もちろん企業とは美術館の場合も有る。

しかしそれは一概に歓迎できない事態だという。

「美術館に品をおさめると、その品はもう動かんのですわ。私ら自分で自分の首締めるようなもんです。だから、美術館へおさめる時には、普通の値段よりも何割増しかのお金を頂戴するようにしとるんですわ」

美術館の所有になる場合も問題点が有る。それは法人化によって固定資産税・相続税を逃れる代りに、所蔵美術品の定期的な展示・公開が義務づけられることである。
私達が美術館で目にした歌仙図は、個人所有の歌仙図と比べて、確かにいたみ方が激しい。

まぁ数寄者のコレクションを美術館で見る事ができなければ、我々は名物道具など目にする機会はないわけだけど。


しかし、本章はそちらが主題ではない。

美術館ではない企業が持つ歌仙図である。
具体的には「中務」と「大中臣能宣」の二幅。

登録台帳を元にNHKは取材に行く。

ところが、その会社の門にはまったく違う名前が掲げられていた。

結局、この二幅は拝見できなかった。

それにしても驚いたのは「中務」を持つ企業と「大中臣能宣」を持つ企業とは同じ系列であった。

どこかの金持ちが、自社系列にダミー会社を作ってそこに美術品を持たせていたという事らしい。

…。


結局、美術品が財産として計算されるのは、売却された時と相続の時。所有しているだけでは税金は取られない。売却しないなら「死なない」ダミー会社が有利ということか。

ほんとせちがらい。