茶人隱語通言略解

佐々木三昧編。茶道全集其の十より。茶道のスラング集である。

クワシトリ(菓子取り)
茶の心得無くして茶席に入り來たる事
スマフタリダフグ(角力取り道具)
箱書附の添わざる茶道具。裸といふに同じ。
ヤトヒ(雇)
道具取合の中、他よりの借物を云ふ

茶碗にニュウが入っている場合、一本だとイチニュウ、二本だとリョウニュウ、三本だとサニュウ。

まぁこんな感じ。

スラングとは、その世界がどういう世界かの反映だ。そういう視点で観て行くと、お金や入札関係の隠語が多い事に気付く。

キンイチマイ(金一枚)
關西地方に於ける道具賣買の符諜。金七圓五拾銭。
テコヲイレル(梃を入れる)
品物の賣値を釣り上ぐるべく心にもなき値を入るヽ事

そして女。

オモヂヤワンが本妻で、オカヘが妾。カヅヂヤワンが数人の情婦。カサネヂヤワンは妻妾同棲。


この頃、茶道は金を持っている男達が道具を競い合うもので、茶道具買う金があるんだから蓄妾ぐらいするわな、というアブラッギッシュなオヤジの世界である事が伝わって来る。

茶道人口の9割方女性の現在、こういった隠語を載せるのは勇気がいりそうだ。

ところで判らないのが一つ。

ネコ(猫)
抹茶の古くなりたるもの

なんで猫なのだろう?判らん。