ダンボールハウス


長嶋千聡/ポプラ社/2005年。


侘びとは、本来、貧乏の事である。


我々は侘びの草庵茶室について語る時、「中途半端な侘び」を前提に茶室を評価している、と思う。


だって、床柱の材質が云々、なんて言っている侘び茶人はエセ侘びであり、貧乏ごっこを徹底できていない半端者に過ぎない。


本当に「侘び」たら、その建築はどうなるのだろうか?その答えは、ホームレスの家についてフィールドワークした本書に隠されている!…かもしれないしそうでないかもしれない。


では、見てみようか。

No.19 庵

床には「たまたまもらった」という3枚の畳が敷き詰められている。
多くのダンボールハウスがじゅうたんや布団で床面を覆っているなか、畳を用いた唯一の事例である。
建物の大きさといい、侘びを求む草庵茶室を思わせる構えだ。
築4年。
敷かれ続けた畳は汚れで黒光りし、板床のようでもある。
一見すると年月を重ねて自然に現れた、「風合い」のように見えなくもないが、これらの正体は使い込まれた、生活の「よごれ」の蓄積である。
本来は、畳の利点である高い吸湿性をいかんなく発揮し、ひたすら湿気を吸収してしまった結果だという。

ううむ。著者も草庵茶室を連想するほどの高度なダンボールハウス。でも、ここでお茶をいただくのは、多分私には少々どころではなく厳しい。


我々の草庵茶室は、真の侘び住いからはほど遠い所にある、ごっこ遊びの産物に過ぎない事がよく判る。そしてお茶の侘びが真の侘びでない事をかなり感謝したくなる。

ダンボールハウス

ダンボールハウス

所蔵図書館多すぎにて割愛。