幻の茶室転合庵

小堀宗通/村松書館/1980年。

今日遠州の茶室、庭園について、かなり研究が進められているが、遠州が晩年伏見に建てた転合庵の実体については、以前として謎につつまれている。

から始まる、転合庵の謎に迫ろう、とする本。

ではどんな謎か?

今、その謎の焦点について述べると、当家に古くから伝わる古文書に「伏見転合庵之記」というのがあって、それによると、この茶室は、五帖半の上段の間を備えた三帖台目という、すこぶる風変りな物である。

三畳台目自体は珍しくもない。
燕庵形式とかは三畳台目だし。
上段の間も珍しくない。

だが、伏見転合庵の形式は、ひどく珍しい。
それはまた別に。

所が、これとは全然別に「松屋会記」に「転合庵の図」が見え、この転合庵は、長四帖が二タ間、二帖が二タ間あり、その一つが上段の間となっていて、およそ当家の古記録とは、似ても似つかない。
更に、「桜山一有筆記」には、「伏見転合庵は四帖半なり」とあって、当家の古記録、「松屋会記」の転合庵の図とも相違するのである。

記録に残る転合庵の姿が一つでない、というのが謎なのである。