茶道要鑑12 床

ソレカラ諸君の座敷の中に納屋があるのを御承知か、本名を床といふのであるが、床を床として使ふて居らぬ、
先づ床の上を見ると、琴があり、碁盤があり、茶道具または書籍箱偖ては置時計、花瓶もあれば軸も懸つてある、卓に香爐と何くれとなく和洋折衷で、飾り立てゝあるが、床といふより寧ろ座敷の物置といふ方が適當かも知れん、
大體床は上段の間であつて、往昔は貴き御方の御座所である普通卑賎の家といへども、上段の間を造り、常に神佛を祀り、之に花を供したものであるが、其後神棚とか佛檀とか、神佛を祭る所が別に出來たから、床へ幅を掛けたり、香臺に香爐を置たり、花を活けたりするやうになつたのである、

床は上座中の上座なのだから、敬意を持って扱おうよ、というお話か。


今の茶の湯ではせいぜい軸+花+一品くらいがいいところだが、大正時代の床は、いろんなものが飾られていたらしい。
たしかに当時の会記を読むと、文房飾りとか琵琶床とか賑やかだよね。

「だから現代の茶の湯は道具の茶から脱却した」と言っていいのだろうか?
さすがにそれは疑問か…。