利休百首談義5 月の輪ぶっこわし

百首扇
湯をくむは柄杓に心つきの輪のそこねぬように覚悟して汲む
宗鳳本
湯をくむは杓に心を月形の輪そこねなく覚悟して汲め

解 この両首ともほぼ同意で、一見すると桃山時代の武将の荒々しい振舞に注意している様にも受け取れる。
しかし、再考してみると、宗鳳本の方は実は湯のつぎ方を教えているのである。
たびたび述べる通り、濃茶を沸騰している湯で溶いても甘い服加減が得られる筈が無い。柄杓の月形に良く気をつけて、そろそろと茶碗に湯を入れるべきである。
月形の急速に翻がえる様な事の無い様によく覚悟せよ、との意味である。

百首扇の歌ではこの柄杓扱いの説明とは受け取りにくい。いかに桃山時代の武将と雖も、湯を汲む時柄杓の柄を抜く様な事は有るまい。その点で宗鳳本の歌の方が手法を教えている点で、重要な意味を持っているのである。

本書の方が受け入れやすい解釈ですな。

「柄杓を釜にぶつけて壊すな」が注意事項として必要なら、「茶碗を建水にぶつけるな」「拭く時に茶杓を折るな」の方がよっぽど起きやすいのに、それに該当する句がないもんねぇ。